映画

映画『500ページの夢の束』多様性と人の可能性についてもう一度考えよう

スタートレックが絡むお話と聞いて、どんなものかと鑑賞したがとても良い作品。ただスタートレックをだしに使うわけでなく、作品テーマのひとつをより引き立たせるためのものであり、恐れ入りました。

作品情報

原題:Please Stand By

公開:2017

上映時間:93分

スタッフ&キャスト

監督ベン・リューイン:実は知らなかった。勉強不足。調べたら生涯松葉杖の生活らしい。そういった生い立ちが映画の題材に影響しているような感じを受けた。

ダコタ・ファニング:”アイ・アム・サム”や”宇宙戦争”などで可愛らしい姿を見せたあの子役もすっかり大人の女性に。大人の魅力たっぷりにさすがの演技力は健在です。

ベン・リューイン:有名なところでは”シックス・センス”でアカデミー賞にノミネート。

アリス・イヴ:って!あれ笑あなた、スタートレックイントゥダークネスに出演してましたよね。結構な立ち位置で笑。私との出会いはメン・イン・ブラックⅢでした。とっても綺麗な女優さんだなと。

あらすじ(ネタバレなし)

主人公ウェンディは大のスタートレック好き。自閉症の彼女はこだわりが強い側面があり、感情のコントロールも苦手としていた。そんな彼女は、大好きなスタートレックの脚本コンテストに向けて執筆をしていた。

 そんなかな郵送では期日に間に合わない事態に陥ってしまう。唯一の方法は遠く離れた地ハリウッドに脚本を直接届けることだけ。様々な困難に直面しながらも、自分の殻を打ち破り前に進んでいくウェンディ。果たして彼女は脚本をハリウッドに無事届けることができるのだろうか…

レビュー(ネタバレあり)

自分は何者か。わかっているのに感情をコントロールできない葛藤。認めてもらえない苛立ち。スタートレックのキャラクターであるスポックと自分を重ねながら語る物語はさすがでした。

感情の間で揺れ動く

スタートレックのテーマのひとつでもある多様性。スタートレックでは様々な異星人たちと共存しています。そのなかに今回、重要なポジションで語られるスポック。スポックは地球人とバルカン人の混血。バルカン人は感情を一切表に出さず、感情がないと思われているほどです。ここでスポックは感情を押し殺すバルカン人の性質と感情を受け入れ表に出す地球人の性質の間で悩みます。

今回の主人公ウェンディも感情のコントロールに苦しみます。わかっているのに抑えられない。この葛藤。自分を落ち着かせるためのルールをいくつも持っていて実行していきます。ウェンディはこの苦しみをスポックと重ねているのではないでしょうか。

多様性とは何か

世間では多様性が大きく取り上げられています。個人の個性に目を向けて、得意なことも苦手なことも理解しあい支え合う。しかし本当に多様性が重視されているでしょうか。そもそも多様性が大事という前にみんな違うのは当たり前なのです。

改めて多様性で溢れるアメリカ社会に向けたメッセージが感じ取れました。

そのものさしは果たして正しいのか

スタートレックの脚本をハリウッドに届けるために彼女は大冒険に出かけます。絶対に越えてはいけない道路を越え、多くのトラブルに巻き込まれながらも進んでいきます。

劇中の前半に周りが無理だと思い込んでいたことを、少しづつ克服していきます。私はできるのになんで周りはわかってくれないの?いわゆる健常者と言われる人たちの物差しによって測られる。だけどその物差しは本当に正しいのか。今まで、煩わしいと思われていたことによって旅が助けられるなんてこともしばしば。周りが無理だと思い込んでいたけれど、冒険に出ることによって道中、彼女はその力を発揮していきます。

自分の物差しだけで他人を測ることがどれだけ、おかしなことかそんなことを感じさせてくれます。

さいごに

この映画の主人公は自閉症です。世間から見ればその症状は彼女の足枷となるものです。ですがこの映画では、その症状を足枷のように描いてはいません。

むしろ、その症状である強いこだわりが道中プラスに働くこともしばしば。多くのトラブルに見舞われますがそれは、自閉症だからではなく、誰だって壁にぶつかるときはぶつかるのです。

旅を通して彼女は様々な力を発揮し、人としての可能性を見せてくれます。

自閉症のリアリティを持ちながら、我々が抱く自閉症のイメージを固めてしまうことなく、人間の可能性を示しています。

この映画を通して、多様性とは何か。人間の可能性とは何か。そんなことを今一度、考える機会になることは間違いありません。

とてもいい映画。皆さんにもぜひみていただきたいです。

U-NEXTで観られるみたいです。僕は知らずにAmazonで400円払ってレンタルしました。くそぅ。

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ビー玉
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